楽な仕事がしたい

 「楽な仕事など今どきあるわけない」と言うつもりは決してありません。楽な仕事は確実に存在します。

 たとえば公務員は民間に比べて楽です。小中学校の教師のように多忙で精神的にキツイ公務員職もありますが、地方自治体の僻地にある支所で働く場合はかなり楽です。それというのも役所の仕事は上から下まで売上責任や利益責任を伴わないため、精神的な負担が少ないからです。「公務員の仕事は法律を遵守することだけ」などと陰口をたたく人もいます。

 役所の仕事がラクだといってもすべての部署でそうだとは限りません。ケースワーカーの仕事(→生活保護部門)はさまざまなリスクを伴いますし、用地部門では地権者との交渉が難しくトラブルに発展することもあります。税務の仕事では暴力団の事務所に取り立てに行くことだってないとは限りません。しかし、「管理責任上、役所から人を出しておかないといけない」という程度の理由で公益事業や外郭団体(財団法人を名のることが多いです)に出向する人はほとんど仕事がないケースも少なからずあり、おしなべて言えばやはり楽な職場だと言えます。たとえイヤな職場に配属されても、若いうちは2〜3年で異動するのが一般的です。
 楽な仕事はあっても構いませんが、収入もその分に見合ったものであるべきです。自治体によって公務員の平均給与が民間のそれより数割高いという現状は異常です。民間と同じような仕事だから同じような給与水準を保つ、という考え方は、利益責任がないことで否定されなければなりません。今後は指定管理者制度等により業務の民間委託が進んで公務員の数が減り、手厚い給与制度や年金制度にもメスが入ると期待されますが、国民の血税を使っている以上、決して監視の目を緩めてはなりません。

 公務員が楽だというのと同じ理由で、行政法人や財団法人、社団法人の仕事も基本的に楽です。採用方法はそれぞれの団体によって異なりますので、興味のある団体の採用情報をホームページなどでひとつひとつチェックしてください。

 一般企業の職種でいうと、総務はたいてい楽だと言われています。営業が予算を抱え、技術者が開発納期や品質問題リスクを抱えているのに対し、総務ではそうした精神的負担が少ないためです。また、総務担当者は一般的に、特命任務を兼ねたり不測の事態に対処する役割を担っていたりするため、ルーチン的な仕事が少なめに設定されていることにもよります。

 IT系でいえば、ネットワーク監視の仕事は深夜も拘束されるとはいえ、基本的に楽です。しかし、システム障害が起きた際には迅速に対応しなければならず、高度な技術力が求められる場合もあります。(→ITのプロになりたい

 工場の仕事では単純に肉体を使う仕事は減少し、機械操作や点検・検査の仕事が増えています。負担という意味では、肉体的負担よりむしろ、職場の衛生環境(悪臭・粉塵・騒音)や、危険を伴う点・時間ノルマ・ミスを許されないことへの精神的負担が主になっています。機械のオペレータや検査の仕事は比較的に楽ですが、工場によって当たり外れが大きいです。 (→工作・ものづくりが好き



 警備員や守衛の仕事は、深夜労働や責任感、注意力などといった事柄を苦にせず、事件や事故に巻き込まれるリスクを気にしなければ楽な仕事でしょう。ただし、屋外だと猛暑や極寒のときに大変辛く、排気ガスや粉塵、騒音に悩まされることが多いです。交通整理をしていて業務用の車を待たせたからといって運転手に殴られたという人の話を聞いたことがあります。仕事を選べるなら、施設内の警備を望みたいところです。
 また、公営住宅や駐車場、寮などの管理人の仕事はラクだという話です。インターネットや求人誌、新聞の求人欄などでこまめに情報を収集しましょう。
 投資家店舗の経営は、才能と運にさえ恵まれれば仕事的には楽です。しかし、自分でリスクを抱えていますし、実際には自己研鑽を怠らない投資家、営業努力を欠かさない店舗経営者がほとんどです。店員の仕事は多忙でない限り楽でしょう。ただし、客層によっては対人ストレスに悩まされます。
 アルバイトでいうと、新薬モニター(治験)はただごろっと横になってときおり採血や検査を受けるだけなので、とても楽です。しかし、確率的にはごくわずかにせよ肉体的リスク(時には生命に関わるリスク)を伴います。興味のある方はこちら(→新薬ネット)をご覧ください。
 
 以上に挙げた仕事は一般的に楽だといっても具体的な職場によって実情は異なります。
 職場にはそれぞれのカルチャーがあるため、仕事自体が楽でも職場の人間関係に悩まされることはよくあります。職場の人たちとプライベートでも仲良くしたいと考えるか、あまり深く関わりたくないと考えるかで、精神的な負担が大きく異なってきます。例えば配属されたらゴルフはマストというような職場はけっこうありますが、ゴルフをやらない人にとっては居心地が良くないものです。かといって人事部が採用条件に「ゴルフをする人」を挙げる会社はほとんどありません。こうした職場の風土は個々の会社や部署によって異なりますし、実情をつかみにくいものです。
 このように個人の性格や嗜好によって、仕事が楽かどうかは変わってきます。仕事がまったくない状態を楽だと思ってくつろげる人もいれば退屈で死にそう、という人もいるわけです。また、楽な仕事につくと周囲の人から「無能なやつだ」「付加価値のないやつだ」とバカにされがちです。

 正社員になって責任をもたされるのがイヤだからという理由で、精神的に楽な派遣社員やフリーターの道を選ぶ若者が増えたと聞きます。
 しかし、「楽」ということだけを基準に仕事を選ぶと人生を無駄に過ごすことになり、40や50になってから「自分はいったい何をやってきたのだろう」と後悔することになります。反対に若い頃に苦労して自分の「付加価値」や「存在意義」を高めておくと、40〜50代になって実際の仕事量は減っても「専門知識」や「後輩への指導」「責任」などによって高い収入が得られます。一般企業の部長や課長は傍から見て楽に見えますが、それは「労働量」ではなく、長年の職務経験によって培われた「管理能力」や「責任感」、「部下への指導力」によって給与を得ているためです。


 若い頃は「楽」を求めるのではなく、やってて楽しいこと、喜んで自ら進んで取り掛かれるようなことを見つけ出し、情熱を持ってそれを突き詰めるのがベストです。
 コミュニケーション能力はほとんどすべての職業に求められます。この能力を身に着けるためには、学生時代からできるだけ他人と一緒に何かをなしとげるような活動をしましょう。昔から一般企業で体育会系、特に組織スポーツの部活経験者が好まれるのは、部活を通じてある目的のために自分の心身を鍛え、仲間とコミュニケーションをおこない、弱い仲間を思いやることを学んでいるに違いないという認識に基づいています。
 他人とのコミュニケーションがどうしても苦手という人は、ゲームやテレビ・アニメ・映画鑑賞、音楽鑑賞、マンガ、読書、コレクションといった受身的な趣味ではなく、創造的な趣味をもつようにしてください。ゲーム好きならただゲームに耽るのでなく、ゲームグラフィックスを学んだり、ゲームシナリオを書いてみたりしましょう。マンガ・アニメ好きならマンガやアニメの制作やキャラクターデザインなどの勉強をしたり、マンガ・アニメのファンサイトを立ち上げたりしましょう。音楽好きなら楽器を演奏したりDTMで作曲したりしましょう。テレビ好きならビデオカメラやCGを操って映像をつくってみましょう。
 優れた作品にたくさん触れるのも大切ですが、実際に自分でつくってみることのほうがいろんな面で価値があります。音楽部や美術部、演劇部、放送部などで活躍したり、友達とバンド活動やダンス、お笑いをやってみるなど、他人と協同して何かができればさらに得るものがあります。評論家になりたいから優れた作品にたくさん触れるのだという人がいますが、何気なしに鑑賞するだけでは決して評論家にはなれません。評論で食べていける人はごくわずかで、作品鑑賞や読書、スポーツ観戦をした回数によってなれるのではなく、専門分野に関する深く幅広い知識や卓越した洞察力、分析力、文章力、表現力、さらには自分を売り込むための営業力や人脈――が備わって初めて評論家になれるのです。
 一人でひきこもりがちな人は、自分が出会って感動した作品について感想文を書くなどして、ホームページやブログを作ってみるのも一つの手です。文章やデザインはスポーツと同じく練習を重ねることで上達しますし、文章力やデザイン力が求められる職場は意外にたくさんあります。(→書く仕事がしたい →アートが好き →デザインが好き →ウェブクリエイターになりたい) 
 読書好きな人も同じです。漫然と本をたくさん読むのでなく、感想文、エッセイ、小説など、なんでもいいから他人に読まれることを前提とした文章をたくさん書くようにしましょう。

 学生は勉強が義務なんだから趣味に専念している場合ではない、という人は、なんのために勉強するか、何を目指して勉強しているのか今一度よく考えてみてください。学歴偏重の風潮は確かにまだ一部の業界に根強く残っていますが、傾向としてはどの業界でも実力がものを言う時代に変わりつつあります。いろんな職業について調べ、自分の向き不向きを考え、漠然としたままでもいいですから、これなら夢中になって取り組めそうだと思える仕事分野を見出したうえで勉強に励みましょう。目的意識があれば勉強へのモチベーションは飛躍的にアップします。
 誰もが憧れる「かっこいい」仕事を安易に目指すのは要注意です。その「かっこいい」仕事に就けなかった場合に「潰し」がきくのか、あるいは「かっこいい」職業に就けた人がその後どういうキャリアをたどるか、についてもじゅうぶん注意を払ってください。

 やりたい仕事が見つからないからといって、いつまでも頭の中でああしようこうしようと悩んでいても始まりません。前もってどんなに調べても、実際にやってみないと自分に合っているかどうか本当のところはわかりません。また、人は年齢によって価値観や嗜好、考え方が変わるものです。
 誰でも上手に褒められれば自信が生まれて楽しくなりますし、最初は好きでなかった仕事でも続けているうちに自分に合っていると感じられるようになる、と多くの人が語っています。
 どんなに好きな職業に就いても、部分的にはイヤな仕事を伴っていることが多いです。自分が好きな職業はたいてい他人にとっても好きな職業ですから、やりたくないからといっていやな仕事を避けていると競争に生き残れません。

 「若いころの苦労は買ってでもせよ」という古い格言があります。別にしなくていい苦労をお金で買ってまでせよとは言いませんが、自分が生涯続けたいと思える分野、自分の価値観に合っている分野の仕事では進んで苦労を背負い込んだほうが将来的に見てプラスになります。
 楽ばかりを求めて苦労を避けていると、中高年を迎えたときに誰からも敬意を払われないという現実が待っていることは確実です。



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