このページでは定年を迎えられた方や事情があって早期退職したシニアの方(50歳以上)の仕事選びについて解説いたします。
シニアと一言でいってもいろんな方がいらっしゃいます。退職金や年金・預金がじゅうぶんあるので悠々自適に暮らしたいという方も多いでしょう。
ところが、平成14年におこなわれた調査(*)によると、60歳になる前に仕事から完全に引退した人は1割未満。また、継続して仕事を続けている人に何歳くらいまで働くつもりですかと質問したところ、70歳かそれ以上と答えた方が3割近くもいたそうです。
働く理由は複数回答(3つ選択)で「健康のため」がトップ(44.3%)、続いて「自分の経験や能力を生かしたい」(43.0%)、生活のため(40.2%)となっています。(但し「生活のため」を第1の理由にあげた人は17.4%)
以上の調査結果から、経済的な理由というより健康維持や社会貢献・社会参加、人とのつながりを重視して働きたいと考えている人が意外と多いことが伺えます。なお、この調査は従業員30人以上の全国の事業所から50歳代以上で退職した男性を対象としており、大学・大学院卒が46.3%を占めていることを考慮する必要があります。
人それぞれですから、できればそれまでいた会社で自分の能力を発揮したいという方もいれば、定年後はむしろこれまでとは違った新しい仕事にチャレンジしたいと思っている方もいるでしょう。ここではまず、
動機別にシニアの仕事選びの入り口をご案内します。
( I ) 動機別シニアの仕事選びのヒント
(1)健康を維持したい
(2)自分の経験・能力を生かしたい
(3)社会貢献がしたい
(4)人とのつながりを大切にしたい・起業したい
(5)趣味を生かせる仕事がしたい
(6)生活のため
( II )
再就職活動の手引き
なお、本ページの内容は以下の本を参考とさせていただきました。
『人生後半からの「好きな仕事」の見つけ方 』 柏木理佳
(著) PHP研究所 (2006/9/26)
『もう一度働く!55歳からの就職読本 』 小島貴子+東海左由留(著)
筑摩書房 (2006/3/23)
(1)健康を維持したい
都会でメディア・広告関係の仕事をしてきたシニアの間では、退職して田舎に移り住み、蕎麦打ちをして暮らすことが流行しているそうです。
わたしが住んでいる田舎でも、広告代理店を退職して自然豊かな場所で昔の茅葺き民家を購入、大学の工学部の協力を仰いで改修して蕎麦屋を始めた人がいます。このように退職後は自分が生まれ育った土地や北海道・沖縄のような自然豊かな土地に移り住む方が多いと聞きます。
たとえば農業や果樹栽培はいかがでしょうか。中高年になってから農業を始める方は数多くいらっしゃいます。農業従事者の後継者不足に解決するため、農村部を多く抱える地方自治体では、移住者に農業セミナーや技術指導、補助金といった支援プログラムを提供しています。また、各県のハローワークでは農林漁業を希望する人のために「就農等支援コーナー」を設けているので、一度相談に伺うと良いでしょう。ハローワークインターネットサービスの農林漁業をやってみようをご覧ください。
庭の手入れが好きなら植木職人も良いでしょう。炎天下の夏や寒さの厳しい冬の作業はきつく、かなりの体力が必要ですし、高所作業やハチの巣駆除が付き物のため危険が伴いますが、健康維持にはもってこいでしょう。中高年になってから始められる方も意外に多いです。
自然が好きな方は「山が好き」「海が好き」「動物が好き」「植物が好き」「田舎で働きたい」を参考にしてください。
スポーツが好きな方は、草野球・少年野球・少年サッカーなどの監督・コーチ・審判員やオリエンテーリング・インストラクターなどのようなボランティア的な仕事も検討してみてはいかがでしょうか。「スポーツが好き」「ゴルフが好き」をご覧ください。
また、福祉の仕事もおススメです。高齢者社会が進むなか、仕事の需要は確実に増えています。自分たちが10年〜20年後に迎える状況に前もって接しておけば、健康管理や高齢者医療、高齢者福祉に関する知識が深まり、自身の老後に備えるうえでも大いに役立ちます。
(→福祉の仕事)
(2)自分の経験・能力を生かしたい
シニアになればたとえどんなに知識欲がある人でも、新しい事柄を吸収する能力は若い頃に比べ衰えてきます。ですので、若い頃から培ってきた専門能力や経験を活かせる仕事を選ぶことが最も望ましいといえるでしょう。
どんな仕事に就いていても、長い間に培ってきたノウハウや専門知識、経験があるはずです。同じ仕事に就いている若い人たちは、あなたがこれまで蓄積してきた知恵や専門知識を学ぶ機会を欲しています。成功経験ばかりでなく失敗もあったでしょう。若い人たちは、他人の成功経験よりむしろ失敗経験から何かを学びます。あなたの培ったノウハウや経験をセミナーという形で商品化するセミナー講師という仕事もあります。
今後、団塊世代が大量に定年を迎える時代にあって、シニアマーケットが大きく拡大することは明らかです。これはすなわち、シニアユーザーの視点がわかるシニアの営業力が、ますます必要とされるようになるということです。実際に一部のルートセールスやテレマーケティングでは高齢者を雇用する例が増えています。
また、 ものを教える仕事でも、生徒がシニアの場合、若者におそわるより近い世代の人に教えてもらうほうが気が楽で分かりやすいということからシニアの力が求められています。シニアによるシニアのためのパソコン教室や詩吟教室、料理教室なども今後さらに増えていくことでしょう。
なお、リストラがさかんにおこなわれた時代、部長以上の役職にあったシニアを対象に、幹部待遇で迎えるという触れ込みで求人広告を出し、入社後に共同経営をもちかけておいて金を騙し取るという手口の詐欺が横行しました。ほかにも職を求めるシニアをターゲットとした詐欺まがいの手口は枚挙にいとまがありません。仕事を紹介すると持ちかけながら、研修費や保証金と称して前金を取る会社にはじゅうぶん気をつけましょう。
(3)社会貢献がしたい
収入よりも社会的意義ややりがいを優先される方にはボランティア活動をおおススメします。
ボランティア活動は収入がゼロではないか思う方もいらっしゃいますが、全てがそうではありません。また、ボランティアで経験や人脈を広げてから定職に就いた人も数多くいます。
NPO法が施行して以来、数多くの特定非営利活動法人(NPO)が設立されましたが、そうしたNPOに参加したり、あるいは自らNPOを設立するなど社会起業という道もあります。(→社会貢献がしたい)
なお、これまでの専門的な職業経験を海外で生かしてみたい気持ちがあるなら、JICAのシニア海外ボランティアを検討してみてはいかがでしょうか。応募資格は満40歳から満69歳までです。(→J独立行政法人・国際協力機構(JICA)のシニア海外ボランティア)
(4)人とのつながりを大切にしたい・起業したい
高度経済成長時代を支えた団塊の世代の方は、どうしても日頃のつきあいが会社の中だけに限られ、定年後も元の同僚たちとゴルフを楽しむという方が多いようです。元同僚たちとのゴルフ三昧も良いですが、せっかくのセカンドライフですから、独立・起業することで新しい人と出会う機会を広げてみてはいかがでしょうか。社長として自分ですべての決断を下して事業を成功に導くことはたいへんやりがいがあります。
独立・開業というと大きな資金が必要だと思いがちですが、SOHO形態による業務請負や営業代理店など少ない資金で始められる個人事業から始めている人は数多くいます。(→自分の店を開きたい →サービスショップ →飲食店を開きたい)
また、保健・医療・福祉増進の分野や学術・文化・芸術・スポーツの振興を図る活動分野、環境保全分野、地域安全活動、国際協力活動、職業能力開発や雇用機会拡充を支援する活動、消費者保護活動などでは、NPO法人として認可を取ることによって、税制上の優遇措置や自治体からの補助金を受けられるチャンスが生まれます。(→社会貢献がしたい)
1から起業するのは大変なので、フランチャイズへの参加を検討する方も多いでしょう。最近のフランチャイズは加盟料やライセンス料が少なく、大きな資金がなくても始められるものが増えてきました。しかし、なかには加盟料やライセンス料は無料といいながら法外な設備費用やサポート料を取るところなど悪質な例もあります。いろんな人に相談してじっくり検討した上でどこに参加するか決めましょう。
『起業バカ
2 やってみたら地獄だった! Idiot Entrepreneurs 』(渡辺
仁(著) 光文社 2005-11-22)は、 起業の明るい側面ばかりを説く「起業本」が世に溢れるなか、自らの失敗談をさらけ出すとともに、フランチャイズ詐欺の手口や事業に失敗したケースを紹介し、安易に起業を考える人に警鐘を鳴らしています。起業を考えている方にはご一読をおススメします。
(5)趣味を生かせる仕事がしたい
これまで生計を立てるために自分のやりたいことを犠牲にして働いてきた方は、定年後くらいは自分の好きなことを仕事にしたいと思うのではないでしょうか。わたしの近所には定年後に竹細工を始め、自分たちでつくったものを売る店を開いたご夫婦がいます。「大きな収益は望めないけど好きな竹細工を通していろんな人と話ができる」と言って、元気な毎日を過ごしています。また、地域の歴史が好きで観光ボランティアをしている人もいます。
どんな趣味でも、とことん没頭できる集中力があれば仕事に結び付けられます。
たとえば、パソコンとネット環境があれば、自分の趣味に関する知識や情熱を文章にしてウェブサイトを作り、広告を貼ることで収入が望めます。(→アフィリエイター) オーディオを趣味にしている人を例に取るなら、どこのメーカーのどのスピーカーがJAZZを聴くのに向いているか、どんなケーブルを選べばよいか、自分なりの考えをもっていることでしょう。自分が購入を決めるまでにどの商品とどの商品を比較し、何が決め手となって商品購入に至ったのか、あるいは購入した結果、満足したのか、どういう点が不満だったのか、こと細かにブログに書いてみてはいかがでしょうか。もちろん主観は入るでしょうが、趣味を極めた人の主観は多くの人の共感を呼びます。世の中にはオーディオが趣味といっても始めたばかりの人も多く、そういう人は高額商品を求める前に、ネットで他人の評価を調べる傾向があります。広告収入を望むなら沢山の人が集まるような魅力的なサイトを作る必要があり、それはかなり至難の業だったりしますが、ホームページ作りは脳の刺激にもなりますし、何よりも知らない人と趣味を通じて仲良くなれるチャンスが生まれます。
ほかにも、料理が好きで調理師になる、お酒が好きで利き酒師になる、コーヒーが好きでバリスタになる、写真が好きでフォトグラファーになる、陶芸が好きで陶芸家になる、切手・コインのコレクションが好きでコイン・切手ショップを開く、文学が好きで作家や翻訳家、詩人、俳人を目指すという道があります。トップページの下部で自分の好きなことを手がかりにして探してみてください。
(6)生活のため
生活資金のために仕事をされる方は、あまりえり好みをしている場合ではないでしょう。そうはいっても自分に向いた仕事でなければ長続きしません。まずは自分がこれまで築き上げてきた専門能力や経験をベースに、次の求職活動の手引きで紹介するような方法で仕事探しをしてください。
雇用状況全般でいうと若年層のほうが有利ですが、企業側にとってもシニアを雇用するメリットはいくつかあります。
企業側のメリットは、待遇面として比較的に安価な労働力が手に入る点や公的助成金が得られる点、企業が期待するシニアの能力としては、専門的な能力や社会人としての習熟度、社会常識、調整・交渉能力です。反対に企業側がシニアを雇用する上でデメリットと感じているのは、能力の個人差が激しいこと、性格が頑固で自分のやり方に固執しがちなこと、年長者のプライドから扱いづらいこと、などです。これらのことを念頭において求職活動をしましょう。
高度な専門能力がなく縁故も期待できない方でも、人材派遣会社に登録することで仕事を得る機会は広がります。
特にこれといって専門能力がない中高年を採用している職種としては、警備員、ビルメンテナンス(清掃スタッフ)、タクシー運転手、マンション・施設の管理人、工場の軽作業、新聞集金(→新聞販売店)などがあります。
ほかにも、公的雇用で仕事が得られる可能性もあります。→公的雇用で働きたい。
求職活動の手引き
シニアが仕事探しをする際に頼れるものとしては、主に次のようなものがあります。
(1)もとの職場や知人の紹介・縁故
(2)公共の職業紹介機関
(3)民間の職業紹介機関
(4)求人誌・求人広告・求人サイト
(1)もとの職場や知人の紹介・縁故
厚生労働省の雇用動向調査によりますと、60歳以上で働いている方のおよそ半数は知人の紹介・縁故によって就職しています。これはそれまでの勤務先からの再就職斡旋や、仕事で培ってきた人脈によるものだといえます。
縁故の場合、紹介者に借りをつくることになるので嫌だという人もいますが、紹介者を通じて求職先の情報が得られる点や紹介者が自分のキャリアや人となりについて求職先に説明してくれる点、紹介者の存在によってある程度の信頼が得られるという点で大いにメリットがあります。
退職前の方でしたら、現在の勤務先の先輩や同僚、取引関係がある会社の知人、業界団体の知人、親類縁者や幼馴染、学生時代の友人、地域の集まりや趣味の集まりなどで知り合った人に、自分が退職後の仕事を探していることをそれとなく伝えてチャンスを広げましょう。
(2)公共の職業紹介機関
2-1.高齢期雇用就業支援センター(またはコーナー)
高齢者の雇用に関する相談・援助の総合窓口で、求職者に対して再就職援助や各種研修・セミナーを実施しています。
→ 独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構ホームページの高齢期雇用就業支援コーナー一覧表
2-2.ハローワーク
全国のハローワークではオンラインのパソコンで希望する職種や地域、賃金などを入力して求人情報を検索できほか、カウンセリングや職業訓練の紹介、セミナー開催などもおこなっています。
また、インターネット上からも同じように求人情報を検索できます。→ハローワークインターネットサービス
人材銀行:課長以上の管理職経験のある人や技術職、専門職の経験者はハローワークの1部門である人材銀行にも登録しておきましょう。
2-3.シルバー人材センター
原則として60歳以上のシニアに臨時的あるいは短期の雇用・就業機会やボランティア活動を紹介する機関です。
→全国シルバー人材センター事業協会
施設管理や駐車場管理、検針・集金、店番、公園清掃、オフィス・マンション清掃、家事援助サービスなどさまざまな仕事を紹介しています。
(3)民間の人材紹介・人材派遣機関
ハローワークだけでなく、民間の人材紹介会社も利用しましょう。原則として登録料や利用料、成約料などを取られることはありません。登録すると面接やカウンセリング、適性検査、スキルチェックを通じてキャリアマッチングをおこなってくれます。シニアの正社員雇用は相変わらず困難な状況が続いていますが、人材派遣法の改正により、シニア派遣に注力する派遣会社が増えています。最初は派遣という形で勤務し、経験を重ねることで正社員への道を模索することも検討しましょう。 人材紹介機関や職業紹介所を探すのに便利なサイトは以下の通りです。
・人材紹介会社イエローページ:日本人材紹介事業協会[人材協]
・人材バンクネット
・全国民営職業紹介事業協会[民紹協]
(4)求人誌・求人広告・求人サイト
無料求人誌: 若年層を対象としたものが多いですが、なかにはシニア向けの求人広告もあります。情報が多いので求人傾向のチェックや条件比較に便利です。
求人チラシ:募集職種にやや偏りがありますが、一般的に自宅に近いエリアの求人が多く掲載されるので、探しやすいというメリットがあります。
新聞の求人広告:広告スペースが小さく得られる情報が少ないため、企業のホームページなどで詳細をチェックする必要があります。
求人サイト: 情報が詳しく検索機能が充実しているため便利です。
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(*)旧 定年到達者等の就業と生活実態に関する調査研究−最終報告−<神代和欣>(平成14年度)
旧・高年齢者雇用開発協会(現・独立行政法人 高齢・障害者雇用支援機構)
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