人をもてなすということは、自分たちが管理する施設や乗り物に人を暖かく迎え入れ、飲食や宿泊、入浴、観光案内などのサービスを提供するということです。ここではおもに宿泊サービスの仕事を紹介します。外食レストランの仕事についてはこちら、飲食店はこちら、旅行関係はこちら、キャビン・アテンダントやグランドスタッフはこちら、客船パーサーはこちらをご覧ください。
宿泊施設関係の仕事をするなら、ホテル専門学校や観光専門学校、大学の観光学科などでホテル業務の基本を学ぶと良いでしょう。外国人旅行客への対応のため、英会話や中国語会話ができる人が求められています。ホテル業界を目指す方は『ホテル業界就職ガイド〈2008〉 』オータパブリケイションズ
(2006/11) などをお読みください。
なお、ホテルビジネスの実務に関係する資格としては ホテル実務技能認定試験があります。
■ホテルの仕事■
ホテルと一言でいっても大規模なラグジャリーホテルから小都市の小さなビジネスホテルまでいろんな種類があります。ここでは大規模なホテルチェーンの一般的な仕事を紹介します。規模が小さいところではこれらの仕事をいくつか兼務することになります。
外資系のホテルでは一般的に親会社のもと総支配人が運営責任者となって組織を構成し、総支配人を頂点として管理部門・宿泊部門・料飲部門・セールス&マーケティング部門、施設管理部門といった組織に分かれます。
日本の代表的なホテルの場合、総支配人は宿泊部門と料飲部門を担当し、管理部門や営業本部は総支配人とは別の指揮系統になるケースが多いです。日本では海外に比べて料飲部門が高い比率を占めており、レストラン&バー部門と宴会部門、調理部門に分かれます。
[宿泊部門の仕事]
―フロントデスク
実務担当者としてはチェックインや予約変更に対応するレセプション・クラークとチェックアウトや会計に対応するキャッシャー業務に分かれます。ほかにも館内サービスの案内や郵便・ファックスの受発信やメッセージの保管などを担当します。適切な接客能力やコミュニケーション能力、外国語能力を求められます。
―リザベーションスタッフ・宿泊予約
電話やファックス、Eメール等で宿泊の予約を受け付け、客室状況に応じて予約の確定をおこないます。宿泊者名とその連絡先の正確な確認が求められます。繁盛期にはキャンセルを見込んでやや多めに予約を受け付ける場合がありますが、その際にはダブルブッキングとなるリスクを抱えることとなり、さじ加減が難しいところです。
―客室マネジャー
ハウスキーピング部門やベルパーソンを統括し、宿泊客の快適性について責任を負います。
―ナイトマネジャー
客室マネジャーに代わって夜間におけるVIPの接遇・苦情処理に対応します。
―ドアマン
宿泊客や宴会利用客の送迎や荷物運び、車の誘導、車や玄関のドアの開閉、タクシーの呼びだしなど、ホテルの玄関業務全般をおこないます。また、不審人物をチェックする警備員の役割も果たします。
―ベルパーソン
ドアマンが玄関からロビーまでを担当するのに対し、ベルパーソンはロビーから客室や宴会場にいたるまでの案内業務を担当します。ドアマンから宿泊客の手荷物を受け継ぎ、チェックインを待って客室まで案内します。チェックアウトの際には客室からロビーまで手荷物を運搬・保管し、宿泊客から出発に当たっての細かい依頼に即時対応します。
―ハウスキーピング
客室及び館内所設備の清掃・整備を担当します。具体的にはベッドメイクや家具・備品のチェック、ランドリーサービスへの対応をおこないます。
―テレホンオペレータ
宿泊客からの電話での相談や問い合わせ・モーニングコール・国際電話の取次ぎなどをおこないます。また、外部からの電話での問い合わせに対し、適切な部門に電話を回すなど最初の対応をおこないます。
―コンシェルジェ
フロントやロビーにデスクを構え、ホテル内の施設や地域の観光案内、観劇・食事の予約、航空券の手配、買物の相談などに応じます。利用客の漠然とした要望や細かい要望にも親切に対応し、利用客の心を満足させる仕事です。
―バトラー
英語で執事を意味し、おもにラグジャリーホテル(5つ星)の貴賓室に宿泊するVIPのために細やかなサービスを提供します。コンシェルジェがフロントやロビーに常駐するのに対し、バトラーは自ら貴賓室を訪れて、ワインの銘柄から料理の選択まで細かい相談に応じます。日本では現在のところ、バトラーサービスを提供するホテルはまだ少ないようですが、富裕層の増加に伴い、将来的に需要が増える可能性があります。
―フィットネスセンタースタッフ
おもにラグジャリーホテル(5つ星)やアップスケールホテル(4つ星)にはホテル利用客が健康維持のために利用するフィットネスジムやスイミングプールが設置されています。そこでは専門のトレーナーなどが雇われています。
[料飲部門]
―アウトレットマネジャー
アウトレットとはこの場合、レストランやバーなどの個別店舗を意味します。アウトレットマネジャーはそれぞれのアウトレットの経営責任を担い、収益向上のため、スタッフの教育や衛生管理、サービス品質の維持向上に努めます。
―レストランスタッフ
ホテルのバー・レストランでは料理長や調理スタッフ、ホールスタッフ、ソムリエ、バーテンダーなどが働いています。(→高級レストランの仕事)
―披露宴スタッフ
披露宴会場のあるホテルではブライダル・コーディネータやコスチュームコーディネータ、司会業、フラワーデザイナーなどの仕事があります。
―宴会予約スタッフ
セールス部門が取得してきた宴会プランや顧客から直接入る宴会予約をうまく調整し、顧客の要望や予算に応じて宴会の具体的な内容を確定し、計画に基づいて料理や花束贈呈などさまざまな手配をおこなう仕事です。顧客の要望を的確に理解し、正しくコーディネートできる能力が問われます。
―宴会スタッフ
大規模なホテルでは、結婚披露宴や同窓会、ビジネスカンファレンスの打ち上げパーティー、各種記念パーティーほか、さまざまな宴会が開けるよう会場及び料理・ドリンク類、運営スタッフを提供しています。結婚披露宴会場をもつホテルではウェディング・プランナーや司会進行係、フラワーコーディネーターなども活躍します。ホテルの宴会スタッフは個々の宴会を指揮するリーダー役のキャプテンを務めますが、バンケットスタッフ(配膳人)はアウトソーシングが一般的です。(→パントリースタッフ, →バンケットスタッフ)
―クローク係
宴会会場やレストランの入り口に常駐し、利用客の外套や荷物を預かります。
―スチュワード
英語で用度品係を意味します。食器やグラス・スプーン・ナイフ・フォークなどの準備に責任をもち、必要数に応じて宴会場やレストランのホールに運びます。また、きれいに洗浄されているかどうか確認し、破損や紛失を削減するよう努めます。
[管理部門の仕事]
大規模なホテル事業では一般企業と同じように人事や総務、経理、経営企画のセクションを設けています。人事・総務・情報システム部門の仕事はこちら、財務・経理の仕事についてはこちら、経営企画の仕事についてはこちらをご覧ください。
―購買
ホテルの印象は家具やインテリア、ファブリック、シャンプーや石鹸などのアメニティグッズによって決定されるため、購買部門の役割は極めて重要です。マーケティング部門と協力して業者への発注業務や価格交渉を専門的におこないます。
―施設管理
スポーツ施設や駐車場の管理のほか、空調や照明、エレベータ機器などの電気系統や温熱系統、通信環境、防災機器の管理、衛生管理、建物全体の清掃管理を担当します。実務に関してはホテル専門のビルメンテナンス会社等にアウトソーシングする場合がほとんどですが、ホテルサイドでも管理体制について熟知する責任者が必要で、工事見積もりや契約事務、行政手続きなどの仕事があります。
―リネンサービス
客室のシーツや枕カバー、洗顔タオルやバスタオル、レストランのテーブルクロスなどをクリーニングする仕事です。宿泊客の衣類の洗濯もおこないます。現在ではアウトソーシングされる傾向にあります。
[営業部門の仕事]
―営業企画・販促企画
宿泊プランや宴会プラン、ディナーショー、そのほかホテルイベントを立案・企画する仕事です。アイデアが重要なのは言うまでもありませんが、関係セクションのコスト構造や仕事について熟知し、関係部門や広告会社のスタッフの力を最大限に活かしてアイデアを形にするプロデュース能力やコーディネート能力が求められます。
―ホテル営業
大企業や外資系の企業、伸び盛りのIT企業は、海外からの出張者の宿泊やビジネスミーティング、展示会、宴会、パーティーなどでよくホテルを利用します。そのためホテルでは得意先や得意先になって欲しい企業の総務担当などにアプローチし、宿泊プランや宴会プランを提案します。
ほかにも旅行代理店や航空会社、各国の大使館、政府の観光機関などを訪問して得意先の発掘をおこないます。
ホテルの営業本部の仕事としては、ほかにも広告・宣伝担当や広報担当の仕事があります。(管理部門に設置される場合もあり)
|
|
ホテルの仕事については本書を参考にしています。本書では日系ホテルと外資系ホテルの運営上の違いやホテルビジネスの動向、ホテル内の仕事とキャリアパスなどについて分かりやすく解説しています。 |
『ホテル戦争―「外資VS老舗」業界再編の勢力地図 』 桐山秀樹(著) 角川書店(2005/12)
『ザ・ホテリエ―最強ホテルマン9人の人間ドキュメント 』 久保
亮吾 (著) オータパブリケイションズ (2005/08)
『No.1ホテルマンが明かすクレーム対応の極意―お客さまの「期待値」を超えるサービスはここから始まる 』
江澤博己 (著) 大和出版 (2005/09)
『ホテル業界就職ガイド〈2008〉 』 オータパブリケイションズ
(2006/11)
■その他の宿泊施設の仕事■
宿泊業は旅館業法で規制されており、同法では旅館業としてホテル、旅館、簡易宿所、下宿の4種を定めています。ちなみに簡易宿所とは、ユースホステルやカプセルホテル、山小屋などのように、宿泊場所を不特定多数の人で共用する構造や設備を備えている宿泊施設を指します。
ビジネスホテル経営
ある程度の人口を抱える都市の駅前には必ずビジネスホテルがあります。初期投資が高額で回収に長期間を要するうえ、設置場所や建築基準、防災設備基準に細かい規定があり、都道府県または保健所を設置する市の保健所で、旅館業法に基づく「ホテル業」の営業許可を取得する必要があります。
料飲施設がある場合は、食品衛生法に基づく「飲食店営業許可」を保健所で取得することが義務付けられており、食品衛生責任者の設置やスタッフ管理など、経営の難しさが増します。ベッドメークや清掃スタッフ、フロントスタッフは人材派遣会社に依頼するとしても、プライス設定やキャンペーン、営業、会計などは基本的にすべて自分の責任でおこないます。
人を雇う場合、健康保険や厚生年金は社会保険事務所、雇用保険は公共職業安定所、労災保険は労働基準監督署で手続きをする必要があります。
『責任者出てこい!―ビジネスホテル総支配人奮闘記 』 南浜太郎+林勝
(著) 新風舎 (2005/04)
旅館経営
旅館には観光客や行楽客をもてなす観光旅館や温泉旅館、料理・宴会がメインの料理旅館、和風ビジネスホテルともいうべきビジネス旅館があります。宿泊料金は基本的に1泊2食付で、駅前のビジネス旅館を除けば「素泊まり」はほとんどありません。したがって食品衛生法に基づく「飲食店営業許可」を保健所で取得する必要があり、食品衛生責任者を置くことが義務づけられています。大規模の旅館ではホテルと同じように各セクションに仕事が分担されますが、小規模の旅館の場合は家族経営となります。人を雇う場合、健康保険や厚生年金は社会保険事務所、雇用保険は公共職業安定所、労災保険は労働基準監督署で手続きをする必要があります。
おもな観光地には旅館組合があるので、相談すると良いでしょう。
『奇跡の温泉宿本物のサービス経営 』 鷲田小弥太+室井俊二
(著) すばる舎 (2004/02)
『旅館・ホテル繁盛のための旅館経営とよいサービスの基本―頭と心のトレーニング 』 佐々木脩(著)
新風舎 (2006/09)
『ホテル旅館のリニューアルと再生―カラー特集カテゴリー別改装事例秀作選 』 フードビジネス
(2006/09)
『ホテル旅館のキャッシュフロー経営 』 松井洋治
(著) 柴田書店 (2000/01)
仲居
旅館や料亭で客の接待や配膳、飯炊きその他さまざまなサービスを提供する仕事です。朝が早く夜も遅いため住み込みの場合が多く、観光地の人里離れた場所では3食付のところもあります。季節によって繁忙期がありますので、旅館に直接雇われるのは仲居頭かまたはそのサブ役で、多くはパートや派遣です。
『臨機応変
接客サービス完璧マニュアル―できなきゃいけない基本マナーからクレーム対応まで 』
関根健夫(著) 大和出版 (2004/01)
『販売・飲食・サービス
接客業の英会話―これだけ言えたら大丈夫!! 』 ノヴァ
(2004/09)
民宿・ペンション経営
一般に家族経営で、「部屋食」でないことで旅館とは線引きされますが、厳密に言うと旅館と大きな違いはありません。旅館業法では旅館業または簡易宿所での営業許可が必要ですが、民宿の多くは部屋数や施設基準によって簡易宿所営業の許可を取得しています(保健所で取得)。ペンションは洋風の民宿です。季節によって宿泊客の数が大きく変動するため、季節営業や予約の場合のみ営業する民宿が多く、また、グリーンツーリズムの普及に伴い、漁師や農家が兼業で民宿を経営することも増えてきました。食品衛生法に基づく「飲食店営業許可」を保健所で取得する必要があり、食品衛生責任者を置くことが義務づけられています。
『ペンション経営入門 』 草柳
鉄雄 (著) 産能大学出版部 (1996/03)
ユースホステル経営/運営スタッフ
ユースホステルには (財)日本ユースホステル協会が直接運営する直営YHと地方自治体が公営施設で運営する公営YH、民間の宿泊業者が日本ユースホステル協会から認定され、契約を結んだ上で経営する民間YHの3種類があります。詳しくはこちら(→
(財)日本ユースホステル協会)をご覧ください。
ゲストハウス経営
バックパッカー文化が定着し、アジアやヨーロッパの安宿が一般に知られるようになったことから、
日本でもドミトリーや個室で安く宿泊できるゲストハウスやライダーハウスが増えています。ただし基本的に薄利商売のため、成功しているゲストハウスは、京都、東京、沖縄など年間を通じて観光客が望める主だった観光地での運営に限られています。
これらを経営するには、保健所で旅館業法で定められた「簡易宿所」の営業許可が必要です。また、飲食物を提供する場合は、食品衛生法に基づく「飲食店営業許可」を保健所で取得する必要があり、食品衛生責任者を置くことが義務づけられています。
ライダーハウス経営
できるだけ安く寝泊りしたいけど野宿やキャンプでは眠れない、特に雨の日はダメ、というライダーのために、一般的にドミトリーで宿泊場所を提供するビジネスです。北海道や信州、伊豆、九州、四国などのツーリングコース近辺に点在し、寝具も無く寝袋持参で500円というところもあります。ゲストハウスと同じく、保健所で旅館業法で定められた「簡易宿所」の営業許可を取得する必要があります。
|