新聞記者になりたい 
本が好き
 調べものが好き


 電通総研の『情報メディア白書』06年度によると、新聞協会に加盟する112社の年間販売売上はおよそ1兆7700億(販売店に支払われる配達手数料の約6500億円を差し引くと約1兆1千億円)。
 これに駅やコンビニでの売上が700億円、出版事業や関連事業が3700億円、広告売上の1兆円(但し代理店への手数料はうち2500億円)が加わります。
 新聞社・通信社の従業員は約5万3000人。販売店舗(約2万軒)で働く人の数はおよそ44万人にも達します。
 以上のことを考えると、新聞がいかに巨大な情報産業であるかということがわかります。
 戦後の高度経済成長に伴って拡大した新聞産業ですが、テレビやインターネットの伸張により、幸福な時代は静かに過ぎ去ろうとしています。テレビについては株式保有―系列化によって囲い込みに成功しましたが、現在でも言論の独占・集中排除の原則から批判に晒されていますし、インターネットの急成長により新たな危機を迎えています。メディアの多様化によって若者の活字離れは一層拍車がかかり、新聞購読読者数及び閲読時間は減少の一途を辿っています。これは新聞の利益減である広告収入の低下を意味します。じじつ電通調査によると2000年に1兆2千億円あった新聞広告費が徐々に減って2006年には1兆円をやや下回っています。

 「マスコミは給与が高いから」という理由で新聞記者を目指すとするなら、それはやめたほうがいいでしょう。しかし、それでは新聞業界に将来はないかというと、決してそうではありません。むしろ混迷を極める現在こそ新聞本来の価値である「信頼性の高いジャーナリズム」が問われています。新聞社は営利企業であると共に社会の公器としての責任があるため、さまざまな制約をもちますが、優れたジャーナリストを育成する機関としては今後も機能を果たし続けるでしょう。

 新聞記者として第1線で働けるのは30代までと言われています。編集委員やデスクになれるのはごく一部で、多くの人は40代になると地方の支局長になるなど管理的な仕事に回されるようです。
社会に対して強い問題意識をもつ記者は、自主退職してフリーのジャーナリストや評論家、大学教授、政治家へと転身しています。

 新聞には朝日や読売、毎日、日経、産経といった全国一般紙のほか、各都府県の地方紙、複数の都府県をカバーするブロック紙(※北海道新聞はブロック紙)、スポーツや芸能関係など大衆向けの紙面を売りにするスポーツ紙、各産業分野の業界紙などがあります。また、紙面はもちませんが、発表報道などを新聞社やテレビ局に卸売りする通信社(共同、時事)も数多くの記者を擁しています。

 大手新聞社で記者が所属する編集局の部門にはおもに次のようなものがあります。

社会部
 事件や事故が起こった際に警察や行政機関、関係者を取材します。幅広い社会問題に関わるため取材対象もさまざまで、時には大スクープをものにする場合もあり、最も新聞記者らしい仕事ができます。

政治部
 国会や首相官邸、各政党本部、各省庁の記者クラブで待機し、政府の記者会見に出席したり、国会議員にインタビューするなどして記事をつくります。一般的に東京本社にだけあって国政のみを扱います。地方政治については支局の政経部記者や社会部記者が取材します。

経済部
 財務省や経産省といった経済関係省庁や日銀、東京証券取引所を取材するほか、金融、情報通信、電機、自動車、エネルギー、農業、貿易、国際経済など各分野に分かれて関係機関や企業を取材します。全国紙の支社や地方・ブロック紙の経済担当記者は各地方の経済状況を取材して記事を作ります。 

国際部
 外報部、外信部などと呼ぶところもあります。一般的に大手新聞社の東京本社にだけあり、海外特派員として各国に派遣されるほか、外電のチェックや来日した海外要人の取材、海外特派員の支援などをします。

運動部
 プロ野球や高校野球、大相撲、サッカー、ゴルフ、マラソン、駅伝などの各種スポーツの現場を取材して、スポーツ欄の記事を書きます。最近は日本のプロスポーツ選手が海外でも活躍するケースが多いため、海外出張の機会が増えてきました。

文化部(学芸部)
 一般的に大手新聞社の東京本社にだけあり、著名な作家やフリージャーナリスト、アーチスト、建築家、伝統芸能関係者などに取材して新聞の文化欄の記事を書きます。新聞社によっては科学部や医療・健康部などが分かれているケースもあります。

校閲部
 各部の記者がつくった記事に目を通し、事実関係や人の名前、誤字脱字のチェック、表現や文章が適切かどうかのチェックをおこないます。


 記者採用された新人は、基本的にまず地方支局に配属されます。警察回りを数年おこない取材力の基礎を身につけた後、地方政治や地方経済、高校野球等、幅広く取材活動をおこなって一人前の記者になります。地方支局を一つまたは複数経験した後は本部に戻ってはじめて上記のような専門部署に配属されます。 新聞社はたいてい出版局や雑誌部門をもっていますから、編集者の仕事に回ることもあります。

 新聞社には他にも報道ヘリを管理する航空部やグラフィックス部門(写真部門)、経営企画部門、管理部門、印刷部門、広告営業部門、販売部門、マルチメディア部門などがあります。大手新聞社では職種別で採用するケースがほとんどですが、記者として採用されても数年後には他の部門に移るケースもあります。


地方紙・ブロック紙
 各都府県には地元密着型の地方紙(県紙)があります。これに対し、複数の都府県をカバーする新聞はブロック紙と呼ばれます(※北海道新聞はブロック紙)。ブロック紙には北海道新聞のほか、東北6県をカバーする河北新報、中日新聞、中国新聞、西日本新聞が含まれます。大きなところでは東京や大阪、海外にも支局を置いています。
 県紙は県内出身者しか採用しないところが多く、記者と営業その他の職を区別せず全職種一括採用するところもあります。ブロック紙は基本的に他県出身者も採用しています。

業界紙・業界誌記者 市民記者 テレビの報道記者


■新聞記者になるには
 私はかつて海外の安宿で、30歳を超えてから某大手新聞社に中途採用の内定をもらった人と同室になりました。彼は酒に酔ってもそれまで読んでいた本の内容をつぶさに記憶しており、さらに本質部分をわかりやすく説明しました。また、話題がこちらの仕事に移ると微に入り細に入りいろんな質問を浴びせかけ、興味深い点を見つけると納得するまでこちらの見解を問い詰めてきました。こういう人こそが記者向きなのだと、その時あらためて感じたものです。彼は大学時代からマスコミ志望でしたが、漠然とした気持ちのまま準備もろくにしなかったため、マスコミ関係の採用が得られませんでした。しかし、一般企業に就職していろんな経験を積み、あらためて新聞記者になりたいという強い気持ちに駆られるようになったそうです。
 自分が本当にやりたいことに気づくのが遅れると、それだけハンディキャップになります。
 もしあなたが新聞記者を目指す高校生なら、幅広い教養や深い見識を身に着けるためにも基本的に大学を卒業しておくべきでしょう。メディア関係の就職に強い大学のゼミを事前に調べ、できればそうしたゼミに入ることを目指し、早いうちから新聞記者/ジャーナリストになるための訓練を始めましょう。
 大学に入学したら早いうちからマスコミ就職対策の本を読み、一般教養問題への対策に取り組むことです。「最近は試験対策や面接対策だけうまい奴がいて困る」という人事担当者もいますが、早いうちからの準備と情熱は比例するといってよいでしょう。新聞社側も短時間の面接だけで人を見るのでなく、アルバイトやインターン制度によって実際に仕事の一部をさせてみて判断する方法を採用しています。
 ジャーナリストになるための訓練は1にも2にも作文です。最初はうまく書けなくても何度も繰り返し書くことで文章力は確実にアップします。また、問題の本質を掴む力や取材能力も問われますので、サークルやアルバイトを通していろんな人と接し、質問やインタビューの訓練を積むことも大切です。
 
【参考書】
 本書は産業としての新聞業界を数多くのデータによって的確に分析し、その危機状況を明らかにするとともに、部数至上主義の虚妄性や新聞とテレビの資本系列の問題などについても鋭く指摘します。
 それだけではありません。朝日新聞と読売新聞の大手2紙による業界再編成の動向に対して毎日新聞と中日新聞と産経新聞が流通・管理面で業務提携して第3極をつくれという具体的な提言までおこなっています。そう、まさに著者は『三国志』で弱小国の蜀の君主、劉備に対して「天下三分の計」を説いた諸葛孔明であるかのようです。
 余談ですが、田中角栄が特定郵便局の膨張に密接に絡んでいたことは知っていましたが、テレビ系列の再編成にも深く関与したという話は本書で初めて知りました。良い悪いは別としてあらためて日本の現代を築いた彼の強大な政治力に驚かされます。読売の渡辺オーナーは現在でもメディアや球界に強大な影響力を振るっていますが、巨大な西武帝国を支配した堤総帥は2005年に逮捕されました。新しい時代のメディアに大きな影響力を振るうのはいったい誰でしょうか?

 『情報のさばき方―新聞記者の実戦ヒント (朝日新書)』 外岡秀俊(著) 朝日新聞社 (2006/10)

 『実践ジャーナリスト養成講座』 ニューズ・ラボ研究会 (編集) 平凡社 (2004/2/24)

 
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